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涼宮ハルヒの消失・感想

少々遅れてしまいましたが、劇場版消失の感想を書きたいと思います。

朝から並んだ甲斐もあって、初日・初回をどうにか見ることが出来ました。
2時間40分という体験したことも無い長時間映画ということもあり、トイレやら体調やら不安ではありましたが、終わってみればあっという間でした。

ご存知の通り、原作の涼宮ハルヒの消失はそれほど長い話ではありません。長編の中では一番短い作品だったと記憶しています。
それを2時間40分もの時間をかけてやるということで、原作もアニメも見ていない人向けに登場人物紹介や消失に至るあらすじでもやるのか、あるいは消失には含まれていないネタばらし(陰謀)までやるのかなどと推測していました。しかし結局そんなことはなく、消失だけの要素で2時間40分使い切りました。無論、オリジナル要素も多々ありましたが。
たっぷりと時間を使った間の取り方は映画ならではですね。後述しますが、キョンの葛藤のシーンや屋上のシーンをあれだけ詳細に描写することはTVでは不可能だったでしょう。

さて、詳細な感想といきます。
この文章を書いている時点ではまだ1回しか見ておらず、長い映画ということもあって記憶があいまいな部分もあります。原作とにらめっこしつつ流れを補完しながら書いていきますが、間違っている部分などあったら申し訳ない。

以下ネタバレ含みます。

《プロローグ》
全体的に原作通り。いつもの日常と言った感じで、これから起こる事件の予兆も感じられない。
個人的には「有希」「ない」「よね」のテンポの良さがお気に入り。
ハルヒの中では朝比奈さん・古泉組とキョン・長門組で扱いが違うというのも面白いところ。
もっとも、予定がない理由についてはキョンと長門ではまるっきり違って来そうですが。

古泉とキョンのボーイズトーク。相変わらずの大げさなモーションは何かを誤魔化しているように見えたのは私だけだろうか。毎日笑うようになるまで安定したハルヒ。その要因はもちろんキョンにあるわけで。さて、古泉君はどう感じているのか。

「ふわ、あふっ」については特に説明は不要でしょう。今回朝比奈さん(小)が存在感を見せるのはこれとグーパンチだけです。南無。
そして三角帽を乗せっぱなしの長門さん。一見いつもの長門さんですが…

谷口の彼女について。一見どうでもいいような与太話ですが、これが翌日以降に生じるキョンとそれ以外の齟齬の第一波となるわけです。
ところでこの光陽園の彼女ってアレですか。九曜さんですか。橘なら間違えなさそうだし、光陽園の制服と言えばモップさんしか居ないでしょう。うん。

余談であり、非常にどうでもいいことなのですが、カニは実をほじくる作業がまた楽しいのです。あの作業がなかったらカニの美味しさは半減すると言っても差し支えないでしょう。まったくハルヒさんは何もわかっていらっしゃらない…

《消失世界1日目》
どことなく焦燥感を誘うBGM。噛み合わない谷口との会話。
本当はキョンもこのあたりでおかしいことに気付いていたのだと思う。どうにか自分自身を納得させているように感じました。

朝倉さん降臨。ハルヒが北高にいないことが判明。狼狽するキョン。
ここでちょっとした疑問点。谷口曰く「あと50年は忘れられない」という中学時代のハルヒ。東中出身は谷口の他にも数名いることは判明しているわけで、あれだけ騒いで誰も反応しないのはおかしい。
また、それほどの有名人なら東中出身でなくても知っている人がいておかしくないはず。中学時代の話なんてのは高校生の雑談ランキング上位に入るでしょうし。
偶然…にしては出来すぎてますし(そもそも風邪の流行自体が意図的)、恐らくこの時点でハルヒのことを知っている人間を排除することが目的なのでしょう。
そもそもキョンを脱出させるだけなら部室のPC触った瞬間にプログラム起動…って方法も取れたのかもしれませんし、改変者にとってはこの世界(というより消失長門さん)にある程度関わってもらう必要があったと推察します。
個人的見解ですが、朝倉さんが遅れて登校するのと何か関係があるのかなーと感じましたね。
後述することになりますが、この朝倉さんはやはり普通の人間ではないようですし。

つるみくコンビ登場。キョンのセクハラ発言。みくるパンチ。これにてみくる(小)の出番終了。
いろんな意味で終わってると言ってましたが、確かに現実世界なら翌日から苛められかねないw
キョンも、朝比奈さんに殴られるという衝撃的事件によって日常の破滅をひしひしと実感し始めた頃でしょう。しかしこの鶴屋さんは怖い。絶対「特性:いかく」持ちですよ。

9組ごと素っ飛ばされた古泉くん。

そして。恐らく映画館にいた全ての人間が固唾をのんで見守った瞬間。
全国の長門ファンが待ち望んだ瞬間。消失長門の登場です。
眼鏡をかけていることと、ピンク色の膝かけをかけていること。後者は原作では描かれなかっただけに嬉しい誤算。

キョンのことは知っているが、宇宙人関連については何もわからない長門さん。
朝比奈さんの時に学習しなかったのか、長門さんの両肩に手を置き壁際に追い詰めるキョン。というかさっきより酷いぞこれは。あのまま長門さんの胸元を(自主規制)てもおかしくないレベル。立派な強制わいせつですよキョンくん。
でもまあ、最後の砦、唯一無二の頼れる存在である長門有希が陥落しかけている状況では無理もないか。
思わぬ展開に、白い頬に朱が刺し、息が荒れる長門さん。かろうじて吐き出した「やめて…」の声で我に帰るキョン。

その後いろいろありつつ、帰ろうとするキョンに渡される入部届け。
正直ね、生きててよかったと思ったさ! 動く消失長門さんの「よかったら」!
もうこの時点でうるっと来てたのは秘密です。一人で見に行ったら泣くかもしれないな。

それにしても、あんなことをされておいても嫌わずに、入部届をあげちゃう長門さん。この子は案外積極的ですね。
「この人なら許せる」って奴でしょうか。春のあの出来事以来ずっと考えてたんでしょうか。ふむ。キョンめ……

家にて、キョもうとの「キョンくんが頭おかしくなってるよー」に不覚にも吹きそうになったw

《消失世界2日目》
朝倉との会話の後にキョンがした妙な例え話。
何かを隠喩しているように思えましたが、よくわかりませんでした。あそこの意味がわかるよ!って方がいたらぜひ教えていただきたい。

どことなく消失世界に馴染んでいる感じのするキョン。
昨日の狼狽はどこへやら、落ち着いてきていましたね。あるいは諦念か。
消失長門さんを観察する、なんていうほのぼのイベントの後、ついに栞発見。

なんというか、見ていて複雑な気持ちでした。
ここであの本を見つけなかった。開かなかったら。そういう可能性もあったわけで。
そうしたら、キョンも自然に文芸部に入部して、自然と長門さんと仲良くなって。たまに家に遊びに行ったり、休日に図書館や本屋さんにデートに出かけたり。
もちろんそれを通常長門さんが望んでいたのかどうか、私にはわからないのですが。
一つの可能性が生まれ、一つの可能性が潰された瞬間、そのように感じました。

その後、文芸部室を捜索するキョン。それを待ってる長門さん。
一緒に帰りたかったのでしょうか。昨日は入部届けを渡す勇気。今日は一緒に帰る勇気。
これって簡単そうに見えてなかなか出来ませんよね。過ぎ去りし思春期に似たような経験した人も結構多いのでは。
気弱で内気そうに見えて、この長門さんはなかなか勇気のある少女です。
「やらなくて後悔するよりも、やって後悔した方がいいっていうよね」という朝倉さんの言葉を思い出しました。

帰り道、自分の部屋に誘う長門さん。
あ、あの、一人暮らしですよねっ。そいつはあなたを押し倒しかけた人ですよっ。
この積極性、もしかしたら長門さん自身が一番驚いているのかもしれません。
ここを逃したらもうチャンスは無い。文字通り"無い"。そう本能的に知っているのかも。

「わたしはあなたに会ったことがある」
消失長門とキョンの唯一の接点。作られた記憶。
それは、キョンが知っている記憶とは似ているようで違ったものでした。
そして原作にはなかった消失長門の「ありがとう」。この言葉は最後のシーンまで聞けないと思っていたので嬉しい不意打ち。
私がよく見に行くサイトさんが、消失の感想として「繰り返しと対」を挙げていました。この「ありがとう」も通常長門の言葉と対比させるために敢えて入れたのでしょうか。

覚えていると答えられないキョン。
この場合「覚えている」も「覚えていない」も正解と言えますから仕方ないところか。
長門さんは落ち着かない様子で急須を指でなぞっていました。沈黙を否定と取ったのかどうかは定かではありません。原作では悲しそうに唇をゆがめるという表現がありましたが、映像ではよくわかりませんでした。
このあたりは次回見るときに注視したいところです。

その後、お邪魔虫登場。
パンフで平野さんが「女って怖い」と言っていたのはこのシーンでしたがどういう意味でしょう。
私は直感的に男がいることを察して上がり込んできたことと、後のエレベーターのシーンの「許さないから」を指しているのかと思いましたが、あいにく女性ではないのでわかりません。
これだ!ってのがありましたら誰か教えてくださいな。

そして、待ってましたの袖つまみ!
これまたお楽しみのシーンだったわけですが、表情がまた………家なら確実に転がってたと思いますね、はい。
さすがにキョンも気付いたですよね、長門さんの気持ちに。少なくともこちらの世界の長門さんは、明らかに自分へ好意を向けていることは。
ところがどっこい原作では「俺に帰って欲しくないのか、朝倉と二人でいるのが気詰まりなのか、だがこの消え入りそうな長門の姿を見ているとどっちでもよくなってきた。」とあります。
キョンくん、これは照れ隠しですよね。どっちだかなんてわかってますよねぇ…?

帰り際、キョンの言葉に喜ぶ長門さんの微笑み。
個人的には聞きたかった台詞だけに「目眩がした」のカットは残念でした。
この長門さんの微笑みはこの世界の象徴ですね。キョンが知っている長門さんは笑わないのですから。
目眩がしたのも、その後ますますハルヒに会いたくなった(=元の世界に戻りたくなった)のも、この世界が自分の知っている世界と違うことを思い知らされたからなのではないでしょうか。
(もちろん単純に可愛くて目眩がしたという要素もあるでしょうが)
さて、ここで微笑む長門有希を見たことは、後々までキョンの思考に強い影響を与えることになります(詳しくは後述)

エレベーターで朝倉さんとの会話。たった2階降りるだけなのにずいぶんゆっくりなエレベーターですな。なんてツッコミは置いておきます。
このシーンで印象に残ったのはやはり「許さないわ」でした。
自然な会話の流れだったのですが、背筋がゾクっとしてしまいました。先を知っているというのもありますが。
それにしても、この世界の朝倉さんの役割は一体何なのでしょう。消失の大きな謎の1つですね。後でゆっくり考えてみたいものです。

《消失世界3日目》
起承転結の転にあたる部分でしょうか。
谷口がハルヒを知っているという事実によって物語が動き始めます。

正直言って、このあたりはあまり印象に残っていません。校門前でのイベントも原作の方がスッキリしててよかったかなぁ、と。
強いて言うなら、古泉がハルヒを好いていることがより明確になったことでしょうか。元の世界の古泉もキョンを「うらやましい」と思っているのでしょうか…ね。
後は、消失ハルヒの表情がキョンに出会う前のハルヒみたくなっているのは上手い演出なのでしょうね。ハルヒの狼狽というのも新鮮ではありました。
言うまでもなく、笑いどころは古泉の短パンです。あそこのフィルムとかはソッチの方々が欲しがりそうですね。

さて、ハルヒを見つけたことでようやくキョンは繋がりを得て、その後成り行きで北高に行くことに。やはりというか何というか、「鍵」はハルヒなのですね。ハルヒと関わることで、自然と鍵が揃う。
このあたりで消失世界の終りが近づいていることを実感しました。

こちらの世界でも行動力が変わらないハルヒのおかげで鍵は集まり、脱出プログラムが起動。
起動した瞬間のキョンの嬉しそうな声ときたら。見てるこちらは複雑でしたが…
3日間消失世界で過ごした結果、やはりキョンは元の世界へ戻りたいという結論に達しました。ハルヒを見つけた後のはしゃぎぶりからもそれは伺えます。ポニテにしろとか言いたい放題でしたし。
この時点ではキョンは世界改変の犯人を知りません(どうせハルヒだと決めつけているようです)。そのため、世界改変者のことを考えることは無く、キョンは元の世界へ戻りたいという本心のみに従って、殆ど葛藤もせず、エンターキーを押す決心をします。

そして長門さんに返される入部届け。
指が震えて上手く受け取れない長門さん。一生懸命涙をこらえていました。
その後キョンが色々長門さんに話していましたけれども、果たして長門さんの耳に入っていたでしょうか。入っていたとしても消失長門さんの心には響かない言葉なのですが。
あの入部届けを渡すのにどれだけ勇気が必要だったか。それを付き返された長門さんがどう感じるか。想像しただけで痛いです。溜息です。
ここら辺は自分の体験と重ね合わせて見ていた人も多いのではないかと思います。典型的な失恋シーンといったところですし、似たような経験した方はいくらでもおられるでしょう。
私はこの長門さんの姿が今でも瞼の裏に焼き付いて離れません。

さて、キョンはエンターキーを押して3年前に戻るわけですが、その前に一つの疑問点。
長門さんは何故鍵を「SOS団5人(実質的にはハルヒ)」に設定したのか。
簡単に脱出させたいなら他にいくらでも方法はあった。脱出させたくないならハルヒを北海道や沖縄にでも飛ばしてしまえばいい。
消失世界の保全を望む長門さんと、キョンの保全を図る長門さんの折衝。ギリギリのライン。そういう考え方もあるでしょう。

もう一つの考えがあるとしたら…長門さんは消失世界をキョンに選んでほしかったのではないでしょうか。
初日や2日目には絶対に脱出出来ないようにしつつ、3日目には簡単に鍵が見つかるように仕向けたその意図は、そこにあったのではないでしょうか。
消失世界や、それを象徴する消失長門さんと触れ合った上で、キョンに選んでほしかった。そこに長門さんの望みがあったとしたら。
もちろん、長門さんは3年前の時点でその望みが断たれることを知っています。それでも、例え規定事項だとしても、そうせざるを得なかった。あるいはそうしたかったのだとしたら。絶対ダメなことが分かっていてもやりたい、やってしまう。人間以上に人間らしい感情。
私はそんな長門さんであってもいいと思うのです。

《3年前の夏》
七夕であることが判明、朝比奈さん(大)との再会。ジョンスミスをよろしくのネタばらし。
(あんまり長くなりすぎてきたので少し飛ばしていきます)
朝比奈さんが今でも長門さんを苦手という理由は何でしょうね。恐らく伏線の一つなのでしょうが。ここら辺は謎が多いです。

その後、朝比奈さんと一緒に長門さんのマンションに向かいます。
長門さんを前に物凄く緊張し、同時につらそうな顔も見せる朝比奈さん。キョンへ寄りかかった時に言った謎の言葉も含めて、彼女の行動は意味深です。
想像するに、彼女はキョンがこれからどうなるのか、言ってしまえば誰と結ばれるのかも知っているのでしょう。そして、彼女はその未来を守り、その未来に誘導しなければならない。
たとえ、その未来が彼女の望むものでなくても。立場に縛られる状況と、自らの望みが叶わない運命。みくると長門さんの共通点とも言えます。そこら辺が彼女の行動に繋がってくるように思えます。
そして、鶴屋さんのいう宇宙と未来の分岐点。この二人の関係がこれからの作品の中核になっていくのかもしれないですね。

長門さんから真犯人を名前を告げられたときのキョンの茫然とした顔が印象的でした。
また、3年前の長門さんは、3年後の自分がしてしまう行動について、そしてそれを自らが阻止しなければならない運命をどう感じたのか。
そのあたり、無表情の奥底に隠されたものを知りたいと思ってしまいます。

《3年後、改変当日》
そしてクライマックス。
真犯人・長門有希による世界改変後、修復すべく彼女の前に姿を現すキョンと朝比奈さん。

ここでキョンの長い葛藤がありました。
一言で言い表せば「俺は非日常を楽しんでいた」に尽きるのですが、その演出方法がまた印象的でした。
そう、改札のシーンです。
元の世界(=非日常の世界)の象徴、涼宮ハルヒ。
消失世界(=日常的な世界)の象徴、消失長門。
キョンの袖をつまむ消失長門。それを振り切ってハルヒらしき人影の方向へ向かうキョン。
やはり一言言及しておきたいのは、これはハルヒと長門のどちらを選ぶかという単純な問題ではないという点です。詳細は別記事で述べましたが、やはり個人ではなく世界の象徴として見るのが妥当でしょう。

さて、キョンはここでようやく今の長門さんを肯定します。無理に変わらなくていい。今のお前が好きだ、と。
しかし、長門さんはもう自分を作り替えてしまっていました。
そこで再び朝倉さん登場。何とも思い切りのよい飛び込みでグサリと行っておりました。血の舞を踊り、消失長門さんにキョンの血を浴びせ、キョンにとどめを刺そうとするところで阻止されます。劇中では明示されませんでしたが、未来の長門さんに。

さて、この朝倉さん自身が消失世界の謎の一つになります。
キョンが言っていた通り、長門さんがキョンを傷つけてもいいと考えるわけはない。
そう考えると、キョンに危害を加えるあの朝倉涼子は何者か、という謎が浮かびあがります。

私の考えはこうです。
消失世界を作るにあたって、宇宙的能力(統合思念体は存在していないらしいので別の何かかもしれませんが)のある人物を作成し、彼女に消失世界の長門有希の友達(あるいは守護者)としての役割を与えた。彼女はプログラムではなく、自らの思考で自律行動が出来る。さらに、長門さんが世界改変に至った事情も知っている。
つまり、キョンを刺すという朝倉さんの行動はプログラミングされたものではなく、長門さんの本心を知っている、長門さんの友達としての朝倉さんの意思そのものであると考えます。だからこそ、未来の長門さんに阻止されるときには狼狽したのではないでしょうか。自分は長門さんのために動いていると思っているのだから当然でしょう。
さらに言えば、キョンを刺した朝倉さんはキョンに「許さないから」と言った朝倉さんと同一人物ではないでしょうか。それを説明づけるためには時間移動や同期能力、それに準ずる何かがどうしても必要となってきます。
もちろん台詞にはなかったですが、私には「許さないって言ったわよね」という朝倉さんの言葉が聞こえるような気がしました。

《世界修復後》
その後、病院へ場面は移ります。
うさちゃんリンゴを作る古泉。元の世界へ戻った安心感という演出でしょうか。

そしてハルヒの顔をいじくるキョン。
懐かしみといか慈しみというか極度の安心感というか。キョンからそんなものを感じました。
あれは恋愛要素なのかというと、どうなのでしょうか。キョンからは今一つそういったものは感じ取れない気がします。恋愛要素以外の愛情表現というかなんというか。
(長キョン派だからかというとそういうわけでもなく、後述する長門さんとの屋上シーンからも恋愛要素はあまり感じません)
まぁ、芋虫ハルヒはなかなか可愛らしかった。その後、朝比奈さんもやってきて大団円的な雰囲気に。

さて、本作最大の目玉である半オリジナル演出の屋上シーン。
「すべての責任はわたしにある」
きっと長門さんが言いたいことは違ったでしょう。「ごめんなさい」と言いたかったのではないでしょうか。しかしそれが出来ないのもまた、こちらの長門さんなのです。

キョンが長門さんにジャケットをかけて、跪いて両手を取っていましたね。
多くの方が感想として述べていらっしゃるように、まるで姫に傅く騎士様でした。
素直に男性的な視点からみると「俺が守ってやる」という意思の表れに感じました。
この行動が長門さんへの愛情表現であることに疑いの余地はありません。さて、それは恋愛でしょうか。友情でしょうか。どちらも違うと感じました。
私は初めてキョンと長門が「人」として向かいあった瞬間だと考えます。
今まで宇宙人としか見ていなかった長門を、「守ってやる」対象(人でも女性でも構いません)として初めて見始めた瞬間であると。

「ユキ」のシーンも同様です。
あのシーン、発音は「有希」だったし、「雪」の勘違いともとれそうでしたね。
つい「有希」と言ってしまったキョンの照れ隠しとも見られますし、「雪」で二人の間の埋められない隙間、すれ違いを表しているとも見られます。
そう、どうとでも取れるんです。どうとでも取れるように、有希の発音にしたのでしょう。だから私も好きなように解釈します。

あれは「有希」です。
直前の「長門」は、今までのキョンが見てきた(そのようにしか見ることができなかった)宇宙人としての長門有希の象徴。
そして「有希」は、今のキョンが見ている、普通の人間、普通の女の子としての長門有希の象徴。
三日間の消失世界を経て、初めて長門を人間として見出した瞬間。それがあの「ユキ」だったのではないでしょうか。

そういえば、望みを否定して元の世界に戻ってきた後に、名前を呼ぶというのは「憂鬱」のハルヒに繋がるところがありますよね。もしかしてそのあたりも狙っているのでしょうか。
憂鬱で閉鎖空間から帰還して初めて、キョンがハルヒを理解し始めたのと同時に、消失で消失世界から帰還したことで、ようやくキョンが長門を理解し始めた。なんとなく似ていますね。

ところで、ここでのキョンのモノローグにこんなものがありました。
「この長門有希にもっとまともな性格を与えることだってできただろうが。殺人鬼になる前の朝倉みたいに、クラスの人気者になるような、明るくて社交的で休みの日に友達とショッピングモールで買い物してるような、そういう奴にだってできただろう。なんだって一人寂しく部屋に閉じこもって本だけ読んでそうな、鬱な娘を設定しやがったんだ。」
この台詞、長門さんのキャラクターを全否定しているという見方も出来るでしょう。
しかし私はそうではないと思っています。

あちらの世界で微笑む長門さんを見て目眩がするほど驚いたキョン。
なぜ驚いたのか。それは長門さんが微笑むという行為を全く想像だにしなかったから。
キョンも気付いたのでしょう。嬉しければ笑う。悲しければ泣く。そんな当たり前のことに驚くこと自体がおかしいのだと。
そんな当たり前のことも出来ないように長門さんを作った情報統合思念体への憤り。そして当たり前のことも出来ない長門さんを当然のように感じ、内面で苦しんでいることに気付くことすら出来なかった自分への憤り。
長門さんの手を強く握りしめていることに気付かないほどの憤り。

少し前の場面のモノローグではキョンはこうも述べています。
「お前は無感動状態が基本仕様だから尚更だったんだろう。たまには喚いたり暴れたり誰かにお前なんかもう知らんと言いたかったことだろう。いや、こいつがそう思わなかったとしても、そうすべきだったのだ。そうさせてやるべきだったのだ。」

ここからもわかるとおり、キョンは別に長門有希の性格を否定しているわけではありません。ただ、こういう風に作ってやれば苦しまないで済んだのではないか、そうでなくてもせめて自分がそれに気付いておくべきだったという憤りではないでしょうか。
消失長門が普通に笑ったり泣いたり出来ることを見て、長門さんが心の奥底でそれを望んでいることを知ったからこそ言える言葉でしょう。

キョンが長門さんの頭に付いた雪を払って、フードを付けてあげるシーン。
前のシーンと同じく、長キョン派であるにも関わらず不思議と恋愛要素はあまり感じませんでした。今まで気づかなかった人としての弱さを見せた長門に対する、純粋な慈しみ。
恋愛とは違うと思いますが、愛情とは言えるかもしれません。人と人との触れ合い、愛情。
その点では寝袋ハルヒへの行動と似たようなものであると感じました。

これまでのキョンの行動を総括すると、見えてくるものは現在の長門有希、ありのままの長門有希の肯定であると言えるでしょう。
もし、消失世界が長門さんの望みであるとしたら、自分自身と全くかけ離れたキャラクターである消失長門を作ったということは、長門さんは自分自身を否定したということになります。
自分自身すら否定した「長門有希」のキョンによる肯定。長門さんにとっては、予想外でありながら、どんな言葉よりも嬉しいものだったのではないでしょうか。

ここで初めて、長門さんは同期で知り得る規定事項をなぞる生き方を捨て、自分の意思のみで生きていくことを決意したのだと思います。
陰謀での同期拒否はここに繋がってきます。過去の自分からの同期要求を拒否したのは、過去の自分がこの決意をしなければいけないからに他なりません。

「ありがとう」は自分を取り戻す、というキョンの決意表明に対するお礼というよりも、自分を肯定してくれたことに対するお礼、自分を変えてくれたことに対するお礼のように思えました。
「ごめんなさい」ではなく「ありがとう」を言えたことは、長門さんにとっても大きい一歩なのでしょう。

《ラストシーン》
市立図書館で読書する長門さん。
小さな男の子が女の子に図書カードを作ってあげていました。その後、男の子は女の子の手を引きどこかへ行きました。
それを見て、おもむろに本で口元を隠す長門さん。

ここも時系列から何から何まで考えらせれる演出でしたが、私なりの解釈を。
ズバリ、あの二人を自らとキョンに重ね合わせて、口元を緩ませていた。時系列としては消失後ですね。
正直言って安直な考えかもしれません。でもそれしかないかな、とも思います。

図書カードを作って貰う女の子は今までの長門さん。
手を引いて行く女の子は、キョンに自らを肯定されたことによって初めて自分の意思で生きるということを決意する長門さん。

今までの二人、これからの二人を暗示するかのような絵を見て、ふっと口元が緩む長門さん。
それは同時に長門さんの中に消失長門さんが生きている証であるとも言えます。
消失長門さんという存在があったからこそ、キョンは長門さんの本当の姿を見つけることが出来て、長門さんは自らを肯定してもらえたのですから。

なんとも恐ろしく長い文章、その上纏まっていない駄文になってしまいましたが、ようやく終わります。
これを全部読んでくれた!というお方が居られましたら、心より感謝を申し上げます。
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テーマ : 涼宮ハルヒの消失
ジャンル : 映画

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No title

実はカニを食べたことがないししゃもです。
世の中の美味しいものを多分色々スルーしてます。

>谷口の彼女
九曜さんってよく言われますよね。
わたしは一度も考えたことがありませんでした。

>キョンくんが頭
これは映画館場内でも笑いが起きてましたw
わたしも笑っちゃった!w
しかしキョもうとって!w

>朝倉さん対峙後のたとえ話
みのむしのシーンですかね?
わたしはキョンが状況を把握したシーンなだけかと思います。
「お前が望んだ不思議なことがない世界にいる。それでお前は幸せなのか?」
ラストまで終始付きまとうその自問自答の初めの1歩だと思うのですが、そういった意味じゃないのかしら。
さて、ゴミ箱にあったミノムシは、木の前というそれまでと雲泥の差の状況に置かれました。
ミノムシはそれで幸せになったのか、その状況に置いたキョンに、おせっかいと言うのか。
それを自覚しつつも、そうしたくなってしまったキョンの動作と、この事件の当事者との気持ちがクロスするようで面白いですね。
「俺がその立場なら、そうしたかもしれない」というような影の問いがあるかのようです。

>本能
ああ、それはそうかも知れませんね。
ものすごく納得出来ました。
そしてすごく切なくなりました。

「ありがとう」が原作になかったのにまず気づきませんでした。
そうなると、やはり対比になるかなぁと思います。
消失の長門さんが、彼女の中に戻っていったという、そんな印象が更に深まって、良いですね。
(気づかなかったけど)

>女って怖い
わたしの感覚は多分男性的な感じが多いので当てになりませんが!w
同じく、直感的に上がりこんできたこと、更には来客を知ってそこで帰るのではなく、食事を食べて行ったこと。
(そういう習慣だったのかも知れませんが、キョン君を帰そうとしたんだと思う。原作で揶揄の文字もあるし)
そこらへんだと思います。
あとは「そんなわけないか~(中略)~長門さんには当てはまらないわ」というところかなぁ。
キョンの回答を待たずに、キョンを否定していること。
そこらへんが思いあたりました。

>袖つまみ
ああ、これは良いシーンでした。ほんと、しねます。
キョンの照れ隠しなのか、映像化にあたり表情がプラス増しなのかわかりませんね。
これであのモノローグがカットされてなかったら、とりあえず殴りに行くところでした。

>眩暈
可愛くて眩暈という意味には全くとれないんですよねぇ。
思い知らされたというところに激しく同意なのです。

>「SOS団5人」にした理由
選んで欲しかった、んでしょうね。
でもそれだけではやはりないと思うんですよね。
もしくは、否定されることを知っていたからこそ、最大の猶予を(消失長門さんに)与える為というのも考えられるのかも知れません。
彼と二人きりでいられる時間を作る為の2日だけというのも……それはそれで切ないのですが。

すみません、こちらのコメントも長くなってしまいましたね。
残りの内容ですが、ほぼわたしの言いたいことを代弁していただいてるかのようなので、「そうなのよ!そうなのよ!」とばしばしひざを叩いていると思ってやってくださいw
長門さんのキャラクターの件についても、キョンの憤りについても、そうなの、それが言いたかったの!という感じで、大変嬉しかったです。

>市立図書館
あのシーンは誰が追加したのでしょうね。
やっぱり谷川先生だと思いたいです。
もしくは歌詞から思いつき、谷川先生に了承を得た(得たからあるのでしょうが)シーンだと思いたいですね。

自分の中では、否定の物語だったはずの消失が、映画化前後からどんどん変わっていき、今では再生の物語になっているのがとても不思議な感じです。

キョンからの愛が忠誠でも家族愛でも仲間愛でも、とりあえずはなんでもいいのです。
それを与えるべき対象になったこと(あるいは強い自覚)自体が嬉しいですよね。

なんかまとまらなくなりましたが、「消失さいこぉぉぉ」という雰囲気を味わっていただけたら嬉しいです。
そしてわたしも存分に味わいました。
色々気にしつつ、もう一度観に行きたいですね。

No title

>ししゃも様
蟹食べたことないですかΣ
毛ガニとかタラバとかズワイとか花咲とか、世間で美味しいと言われている高い蟹はもちろん美味しいのですが、ながといっく一押しなのがモクズガニ!
そこらの川にいる蟹で地方によっては「川蟹」などと呼ばれてるようです。
小さい蟹なのですが内子(蟹味噌)の美味しさは最高ですよ。上海ガニの亜種ということを最近知りました。
致命的な難点は売ってないこと(ダメじゃん)。 よく祖父が近所の川に籠網を張って捕まえて来てくれてたなぁ。

>みのむしのシーン
はい、そうです。うーん、やはりキョンの現状把握ってことになりますよねぇ。
あのミノムシはキョンを隠喩しているっていうのが妥当なのだと思います。

実は、原作の時から感じていたのですが、あれ(原作だと不幸な人、映画だとミノムシ)って消失長門さんの現状にも似ているような気がするのですよね。
・望まない世界から一転、望み通りの世界になった。
・そこに消失長門さんの意思は介在していない。
もちろん例え話とは少々状況が違ってきますし、そもそも長門さんと消失長門さんは全くの別人なので消失長門さんは「望みが叶ったことに気付いていない」のですが。やはり考えすぎか。

>女って怖い
なるほど…
無意識的にせよ意識的にせよキョンを長門さんから遠ざけようとしてるのは怖いですね;
怖いと言えば、「許さないから」に戦慄したのは自分だけなのでしょうか。先を知っているから、というのもありますが…
この台詞があるからこそ、やはりこの朝倉さんに同期機能、ないしはそれに近い何かがあると信じてやみません。

目眩はやはり「衝撃」という意味の目眩と取るほうが自然でしょうね。
というか、やはりカットされてますが原作ではその前にしっかり「可愛い」と述べてますし。

>でもそれだけではやはりないと思うんですよね。
"人"の思考や心を何か一つに単純化なんて出来ないですよね。
自分の中ではメインはそれだと思っているのですが、根拠なんてないようなものですし。小説のキャラクターに限らず、人の気持ちってわからないです。だからこそ面白いのかもしれませんが。

消失長門さんに出来るだけ長い時間を与える、というのは自分は考えもしなかったです。盲点でした。
何故か私は長門さんと消失長門さんの関わりだとか、二人の関係だとかをあまり考えることが出来なかったりします。だから長門さんが消失長門さんのために何かをするという発想自体がなかった……うーん。やっぱり人の感想聞くのって面白いです。


似たような感想ということで凄く安心しました。
でも自分はししゃもさんの感想を先に見ていますので、知らず知らずに影響を受けてるんだとも思います。特に「対比」については色々と考えらせられました。
自分にとっても消失像が変わる映画でしたね…きっとこれからもいろんな見方を知ることになるんでしょう。

コメントありがとうございました!
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プロフィール

ながといっく

Author:ながといっく
長門スキーなSS書き。
最近は忙しくてあまり書けていない(´・ω・`)

連絡先はこちら。
nagatoeic●hotmail.co.jp
(●を@に変えてくださいませ)

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