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薄い胸の上下運動論争についての報告書

薄い胸の上下運動論争

報告者:ながといっく

第一 意義
 原作「涼宮ハルヒの消失」における地の文である『薄い胸の上下運動』の解釈についての争い。ひいては、長門有希の胸の大きさについての争い。
 薄い胸論争、胸論争などと言われることもある。

第二 背景事情
 原作において、長門有希の容姿に関する表現は少ない。
 無表情・無感情・無口などのキャラクターに関する表現や、瞳に関する表現は多々見受けられるが、それ以外の容姿に関する表現については「白い肌(憂鬱53Pなど)」「ボブカットをさらに短くしたような髪(憂鬱53P)」「それなりに整った顔(憂鬱53P)」「華奢な肩(消失60P)」といった程度の表記が見られるに過ぎない。
 例えば、涼宮ハルヒについては何度も「黒髪」であることが明記されているが、長門有希については髪の色すらわからないのが現状である。
 上記のような、長門有希の容姿に関する情報不足が論争の背景にあったものと考えられる。

第三 経緯
 上記のような事情から、原作において直接的に長門有希の胸の大きさを表した表現は存在しない。
 ところが、①長門有希以外のヒロインである涼宮ハルヒ、朝比奈みくるが巨乳であることが原作で明記されていること、②原作絵における長門有希が明らかに貧乳に描かれていること(ただし、イラスト担当のいとうのいぢ氏が胸を控えめに書く傾向のあるイラストレーターであることに注意)、③後述する「薄い胸の上下運動」という文章を「薄い胸=小さい胸」と解していたことから、ファンの間では「長門有希は貧乳である」という認識が自然に浸透していった。
 その結果、主に二次創作において長門有希の貧乳設定が多用されることになり、また、長門有希のイラスト・フィギュアなどで胸が大きめなものがある度に「情報操作」「世界改変」などというコメントが多く見られた。
 無論、長門有希を貧乳扱いする者の大半は長門有希のファンであり、一部の例外を除けば、そこに長門有希を卑下する意図はなかったといえる。しかし、原作で明記されていないにもかかわらず、彼女を一方的に貧乳扱いする風潮を嫌う者も少なからず存在しており、2chやファンサイトなどのコミュニティでは、貧乳扱いをする者と貧乳扱いに反発する者との間で小競り合いがよく見られた。
 そのような状況の中、貧乳扱いに反発する者の一人が、貧乳扱いの根拠の一つであった上記③を攻撃するべく提唱したのが、後述する「薄い上下運動説」であり、この見解に対する反論が、同じく後述する「薄い胸説」である。
 以下、問題の表現および二つの見解について詳論する。

第四 論争
1.問題の表現
 目の焦点は本の文字上に合っているようだが何一つ読んでいないのは明らかである。長門は薄く開いた口で音もなく呼吸しており、薄い胸の上下運動もはっきり解るまでになってきた。弱々しげな頬周辺がますます赤くなっていく(消失84P)。

注:厳密に言えば、この文章は平行世界の長門有希(通称:消失長門)の動作についての表現であり、現行世界の長門有希を描写したものではない。しかし、作中の描写等から、両者の外見面は全く同一であると考えられるため、ここでは消失長門の胸の大きさは長門有希の胸の大きさと同一と見る。

2.対立する二見解
(a)薄い胸説
 "薄い"を"胸"にかけ、「"薄い胸"の"上下運動"」と読む見解。
 この見解からは、長門有希の胸は薄い、すなわち小さいということになる。

(b)薄い上下運動説
 "薄い"を"上下運動"にかけ、「"薄い"胸の上下運動"」と読む見解。
 この見解からは、薄い(小さい)のは上下運動という動作そのものであり、胸の大きさではないということになる。なお、この見解に立つ場合でも、胸の大きさはあくまで不明であり、胸が大きいということにはならない点に留意されたい。

注:上記(a)(b)は便宜上項目分けに使用した記号であり、長門有希のカップ数を表すものではない。

3.薄い胸説の論拠とそれに対する反論
(1)論拠1
 文章を前から順に読んでいけば、「薄い」は直後の「胸」にかかると考えるのが自然である。
 また、上下運動を表す形容詞は「大きい小さい」であり「薄い厚い」ではない。「厚い上下運動」という表現の不自然さを考えれば明白である。わざわざそのような不自然な解釈をする必要はない。
【反論】
 そもそも、「薄い厚い」は胸ではなく胸板に使われる形容詞であり、薄い胸という語法自体が誤用である。
【再反論】
 厳密には誤用といえるかもしれないが、現代日本では「胸が小さい」ことを「薄い胸」と表現することは一般的であり、定着した表現であるといえる。
 また、本作が現代日本を舞台とした、高校生の一人称視点で書かれたライトノベルであることからすれば、主人公がそのような"イマドキの"表現を使うことに何らおかしい点はない。前述のとおり、「薄い」を「上下運動」にかからせる表現こそが誤用であり、また一般的でもない。

(2)論拠2
 多少譲歩し、表現単体でみればどちらの意味にもとることができるとしても、長門有希という、華奢であったり小柄であることが明らかにされているキャラクターに対して使われた表現であることを加味すれば、やはり薄いは胸の大小を表していると考えるべきである。
【反論】
 身体の小ささと胸の大きさに有意な相関関係は認められない。そもそも、作中の代表的な巨乳キャラクターである朝比奈みくる(152cm)は長門有希(154cm)よりも小柄である。

4.薄い上下運動説の論拠とそれに対する反論
(1)論拠1
 問題の表現の直前において、「薄く開いた口」という表現が使われているが、ここで「薄く」は動きを表す言葉である「開いた」にかかっている。そうであれば、直後の「薄い」も動作である「上下運動」にかかると考えるのが自然。
【反論】
 確かに「開いた」も「上下運動」も動きを表す言葉ではあるが、前者は用言であり後者は体言であるという違いがある。
 一連の文章を繰り返しによるテンポの良さを企図した、あるいは韻を踏んだ表現であると考えるとしても、「薄く開いた」というワードは「口」という体の一部分にかかっているのであるから、「薄い」というワードも「胸」という体の一部分にかかっていると考えるべきである。すなわち、「薄く開いた口」と「薄い胸」が対になる表現であるといえる。

(2)論拠2
 同書の英訳版において、問題の部分は「the subtle rise and fall of her chest」と翻訳されている。これを和訳すると「彼女の胸の微妙な上下」となり、薄い上下運動説が採用されていることが明らかである。
 現在のところ、薄い上下運動説における最大の根拠であるといえる。
【反論】
 谷川流氏が翻訳に絡んでいるか否かは明らかではなく、翻訳者の思い込み・誤訳の可能性もある。また、そもそも英語圏において「薄い胸」という表現が存在するかどうかも不明であり、上記のように訳さざるをえなかった可能性もある。

5.注意点
 この問題は、直接的には長門有希の胸の大きさについての論争であり、胸の大きさについての好みが主張する見解と合致する例が多い。
 しかし、原作好きを中心に、この論争を胸の大小の問題ではなく、「文章の読み方」の問題として捉えている論者も少なからず存在する。
 そのため、例えば薄い胸説の論者であっても、必ずしも「長門有希は貧乳じゃなければだめだ」という見解を有しているわけではないことに留意したい長門有希の胸が貧乳でもそうでなくても構わないが、この文章の読み方を受け入れることはできないという考えを持つ者も少なからず存在するのである。無論、その逆も当然である。

第五 結論
 長門有希ファンを二分する論争へと発展したこの問題は、双方ともに決定的な根拠を提出することができておらず、未だ決着の兆しは見えない。
 原作中の描写、あるいは原作者本人のコメント等で言及されれば一挙に解決する問題ではあるが、残念ながらその蓋然性は高いとはいえない。
 今後も、この論争の行方を注視していく必要があろう。
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テーマ : 物書きのひとりごと
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

Author:ながといっく
長門スキーなSS書き。
最近は忙しくてあまり書けていない(´・ω・`)

連絡先はこちら。
nagatoeic●hotmail.co.jp
(●を@に変えてくださいませ)

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